第91回 認知症介護 介護のストレスか、グループホームに預けた負い目か 

Pocket

 私が寝ている部屋の隣の部屋に母がいます。

 母はパニック状態になっていて、ふすまをブスッ、ブスッと傘か何かで刺してきます。

 母の声はしません。

 「お母さん、お母さん」と私は、母を落ち着かせようと何度も母を呼びました。

 しかし、声が出せません。

 「お母さん、お母さん」と言っているつもりなのに、「おあああん、おあああん」としか言えません。

 私は焦りました。

 母は黙ったままブスッ、ブスッとふすまを刺してくるのをやめません。

 「おあああん、おあああん」。

 私の方がパニック状態です。

 「大丈夫?」という妻の声で、私は目が覚めました。

 夢を見ていたのです。

 母の姿も見えないし、母の声も聞こえないのに、母がパニック状態と分かっていたのは、夢だったからなのでした。

 「うなされているようだったよ。お母さん、お母さんって言っていたよ。」と妻は言いました。

 認知症の母をグループホームに預けることになってから、8カ月ほどが経過した2016年4月のことでした。

 「家族がつぶれてはいけない、明るい介護を目指そう」と心がけてはいましたが、私には、なかなかあっけらかんとした介護はできませんでした。

 母の一挙手一投足、一言一言に心が揺れました。

 自宅での介護もそろそろ限界だと感じて、母をグループホームに預かってもらうことにして、介護の大変さは軽減されたものの、「本当によかったのだろうか」という思いは、なかなか消えませんでした。

 「介護を苦労と思ってはいけない」などと、どうしても力が入ってしまい、自然体ではいられないのです。

 介護している人の多くはそうだと思いますが。

 2016年4月のメモです。

2016年4月○日

・夢を見た。

 寝言を言っていたようだ。

 私の妻は「うなされているようだった」と言っていた。

 時計を見たら朝の2時だった。

 母が隣の部屋にいて、私は寝ている。

 母が何かパニックになったようにわめきだして、傘のようなもので部屋を仕切っているふすまをブスッ、ブスッと刺し始めた。

 それで寝ていた私は、母を少しでも落ち着かせようと「お母さん、お母さん」と声を出していたのだ。

 「お母さん」という言葉がうまく言えなくて焦りながら。

 夢の中では「お母さん」と3回言っていた。

 母を介護してきたストレスや、母をグループホームに預けている悲しみが、このような形で現れたのかもしれない。

 今もだいたい週に一度くらいのペースで面会には行っているが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です