第2回 認知症介護 介護に携わる人の力になれたら

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「家族を介護する全国の人たちの思いを背負っていた」。

認知症の男性(当時91歳)が列車にはねられて死亡した事故(2007年12月、愛知県大府市)で、JR東海に勝訴した長男(65歳)が朝日新聞のインタビューに応じて、こう答えました。(2016年3月22日の朝日新聞による。)

まさに、そうです。私も注目していました。

介護の日々はつらいものです。しかし、そのつらさはなかなか分かってもらえません。

認知症の介護には、また特有の難しさがあります。

この長男はこうも述べています。

「夜中に何度も起こされる時の眠さや、汚れた体を洗う時の臭いは、いくら伝えようとしても、書面では伝えきれない。だから、裁判官は介護する側の生活や思いを五感で想像し、考えてほしい」。

私の母も、2011年頃から物忘れが目立ち始め、2012年には認知症と診断されました。2015年8月に母がグループホームに入るまで、様々な状況に悩まされました。冷蔵庫に同じものが溜まっていき腐っていく。夜中に大声で騒いだりカンカン音を立てたりする。母が徘徊してみんなで探し回ったこともありました。

2009年4月20日に元タレントの清水由貴子さんが自殺した事件を、私は他人事とは思えませんでした。清水さんの自殺は介護によるうつが原因だとされました。数年の闘病(家族にとっては介護)を経て2005年4月に私の父は他界しており、清水さんの事件は、その4年後のことでした。

その後も老老介護による介護疲れの心中事件、殺人事件が報道されるたびに私の胸は痛みました。

しかし、介護の現状の深刻さが広く認識されるには、もう少し時間が必要でした。

介護の現状の深刻さが広く認識され始めたのは、介護離職の多さが問題にされるようになった2012年か2013年以降のように思います。厚労省が実施している「就業構造基本調査(2012年)」によると、2011年10月から2012年9月の1年間だけでも、介護を理由に介護離職をした人は10万人以上にのぼっています。

総務省の「社会生活基本調査」(2011年)によると、15 歳以上でふだん家族を介護している人は 682 万9千人となっています。そのうち、女性は 415万4千人、男性は 267 万5千人です。高齢化社会の進展に伴って、介護の問題はますます深刻さを増していきます。認知症の人やその家族を支える環境はまだまだ整っているとは言えません。

もちろん、認知症の症状や対処の仕方はいろいろなので、私の見聞きしたことはほんの一例です。しかし、それを紹介することで、これから介護に直面する人の気持ちが少しでも楽になったり、介護への覚悟をするきっかけになったりすれば幸いです。

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