第100回 認知症介護 転倒して股関節の骨折 その2

 認知症の母がグループホームに入って1年半ほど経った2017年3月、母が転倒して股関節を骨折しました。

 母が入院した翌日、遠方に住む私の兄が来て、私の妻と二人の子どもたちと私の5人で、母の見舞いに病院に行きました。

 点滴するための管を抜かないように、母の手にはミトンがはめられており、母はそれが煩わしくて仕方がないようでした。

 それはそうですよね。

 必要があれば拘束することもあるという承諾書にサインしているものの、自分がされたらどれほど不快だろうかと想像し、心が痛みました。

 子どもには言いやすかったからか、帰り際に母は三女の秋子に向かって「テレビが見たい」と言いました。

 そこで看護師さんとも相談し、イヤホンを売店で買ってきました。

 テレビカードも購入し、看護師さんに「テレビを見せてやってください」とお願いしました。

 母はテレビの操作もイヤホンの着脱も自分ではできないので、看護師さんがどれだけ面倒見てくれるかに不安はありました。

 「テレビ見たい」と母に尋ね、イヤホンを着脱し、テレビをつけたり消したりする、忙しい看護師さんにそこまで要求するのは難しい気がしました。

 「テレビを見せてやってください」とお願いはしましたし、看護師さんも「いいですよ」とは言っていたものの、担当する看護師も日々変わるし、なかなかそこまではしてもらえませんでした。

 テレビカードの残高はあまり減っていきませんでした。

2017年3月○日

・昼頃、兄が来て、(病院の近くでたこ焼きを食べてから)私の妻、次女の夏子、三女の秋子と5人で市民病院に見舞いに行った。

 昨日と同様、母はミトンを取りたいと何度も言っていた。

 管を抜いたりしないようにするため、両手にミトンを付けられていて、それが煩わしくて仕方がないようだ。

 帰り際に秋子に「テレビが見たい」と言ったようで、看護師さんに相談して、テレビカードとイヤホンを買って、「テレビを見させてやってください」とお願いしてきた。

 もちろん、自分ではテレビの操作もイヤホンの着脱もできないから、どれだけ看護師さんがしてくれるのか分からないが。

 明日は妻が9時前に行き、私は勤務が終わった1時ごろに行く予定にしている。

 手術は9時半の予定。

 一気に認知症が悪化するのも覚悟はしている。

 本人が「悲しいね」と言うので、こちらも本当に悲しくなる。

第99回 認知症介護 認知症、前を向くために その4

 「認知症、前を向くために」という特集記事が、朝日新聞のオピニオン欄にあります。

 先日(2018年12月23日)はその第4回で、「リスクに備える」がテーマです。

 まず、朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部が紹介されています。

 「認知症の人を家族のみで支えるのは厳しく介護職員の方々に救われることが多いです。懸命に寄り添ってくれる介護職員の処遇改善を強く望みます」という40代女性の声がありました。

 認知症の人が起こした事故の被害者と加害者双方を自治体が救済する「神戸モデル」の紹介もありました。

 来年度から始まる全国初の仕組みです。

 早期受診を促す助成制度があります。

 65歳以上の神戸市民なら自己負担ゼロで認知症の健診や精密検査が受けられるのです。

 認知症と診断されたら、最高2億円の賠償責任保険に加入しますが、その保険料は市の負担です。

 この記事の中にもありますが、認知症の人の事故や、第三者への賠償責任に関心が高まったのは、愛知県大府市で認知症の男性が列車にはねられた事故がきっかけでした。

 大府市ではこの12月21日、認知症条例制定1年を記念してモニュメントの除幕式がありました。

 認知症に対する施策という点で、大府市と神戸市は注目の市ですね。

 記事には、朝日新聞デジタルのアンケートの結果を表にしたものもありました。

 「あなたや家族が認知症になったとき、前向きに生きるために、特にどんな情報が必要だと思いますか?」という問いに対する上位3項目は、1位「介護サービスの情報」、2位「行政など相談窓口の情報」、3位「医療の情報」でした。

 「認知症とともに生きる社会をつくるために、どんな取り組みが広がってほしいですか?」という問いに対する上位3項目は、1位「認知症の当事者の声を踏まえた政策や施策」、2位「認知症の人や家族を対象にした各種の保険や公的救済」、3位「介護保険サービスの充実」でした。

 12月5日から18日のアンケートで、回答数が158と多くはないものの、参考になると思います。

 記事にはさらに、捜索費用などを補償するための当事者向け保険が出てきていることも紹介されていました。

 外出して行方不明になった時の捜索費用を補償するというのは、「業界初」とのことです。

 本題からはそれますが、私がこの記事で感じたことの一つは、保険業界も吸収合併などの再編が進んだのだなということでした。

 記事に出て来る保険会社の名前は、「東京海上日動火災保険」、「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命」、「三井住友海上火災保険」、「あいおいニッセイ同和損害保険」でしたから。

第98回 認知症介護 転倒して股関節の骨折 その1

認知症の母がグループホームに入ったのが、2015年8月。

それから1年半ほど経った2017年3月、母はグループホームのトイレで転倒したらしく、股関節を骨折してしまいました。

母がずっと痛がっていたので整形外科に連れて行ったところ、骨折が分かったとグループホームのスタッフの方から私に電話があったのです。

その連絡があった電話で、手術するかどうかを決めてほしいと言われました。

「こういう場合はたいてい手術する」ということだったので、それほどの迷いはありませんでした。

ただ、手術して入院すれば、痛み止めなどの薬の影響も心配ですし、動くことができないため単調な生活になることも想像され、認知症が一気に進むことを私は心配しました。

骨折して入院して認知症が進むという話は、本で読んだり、話を聞いたりしていたからです。

私が「手術をお願いします」と言ったので、大きな病院に搬送してもらい、母は手術することになりました。

入院して2日後に手術の枠が空いているということで、手術してもらえることになりました。

手術に当たっては、いろいろと同意書や承諾書などを書かなくてはなりませんでした。

病院側が訴訟リスクを減らすために必要な手続だろうとは思いますが、気持ちのいいものではありませんでした。

何かミスがあっても、「承諾してもらっていますから」と言われそうな感じがして。

手術承諾書、輸血承諾書、血液製剤承諾書、拘束承諾書、全身麻酔承諾書。

点滴の管を抜いたりしないように、手術後に手にミトンをはめられて拘束される場面もありましたが、仕方ないとはいえ、とてもかわいそうでした。

入院は2週間から1か月ほどとのこと、最近はあまり長く入院させてもらえなくなっているようです。

リハビリも考えたら、4ヵ月くらいはかかりそうなのに。

退院後の受け入れ先も心配でしたが、ベッドから車いすに移動できるようになったら大丈夫と今のグループホームからは言ってもらい、少し安心しました。

そのあたりの心配を聞いてくれ、相談に乗ってくれるケースワーカーも、大病院にはいました。

この日のメモはさすがに長いです。

2017年3月のメモです。

2017年3月○日

・昨日、母が右足の付け根を骨折した。

 実際骨折したのはおそらく一昨日。

 昼頃にグループホーム「S」のIさんから電話があり、昨日トイレに行ってから出て来なくて、ずっと痛がっていたので、T整形で診てもらったところ、「骨折している」、「この場合たいていは手術するがどうするか」と聞かれた。

私が「お願いします」と言ったら、大きな病院を手配してくれて、市民病院で手術入院することになった。

手術に当たってのいくつかの検査があった。

 レントゲン、CT、血液検査などなど。

全身麻酔の手術で、手術自体は15分程度で、前後の処置を含めて1時間程度の見込みとのこと。

 入院2日後の9時半から手術することになった。

手術同意書のみならず、輸血が必要になった場合の承諾書、血液製剤が必要になった場合の承諾書、拘束が必要になった場合の承諾書、全員麻酔の承諾書などを書いた。

妻が調べたところ4ヵ月くらいかかるらしいが、医師に入院がどれくらいになるかを尋ねたら、2週間から1か月という返事だった。

長くは入院させてくれないのだろう。

歩けるようになってから受け入れるというグループホームなら1か月くらい、座れるようになったら大丈夫というグループホームなら2週間くらい、受け入れ態勢によるとのこと。

 骨折などが原因で認知症が一気に悪化することも多いと聞くが、と医師に尋ねたら、「そうですね」と言っていた。

脳に麻酔をかける全身麻酔の手術だし、しばらくは痛み止めの薬も使うだろうし、悪化は避けられない気がする。

それでも、手術しないで痛みが治まるのを1か月くらい寝たきりで待ってもよくないから、たいていは手術ということらしい。

グループホームのIさんがパジャマやタオル、コップ、箸、スプーン、おむつなどをグループホームに取りに行ってくれた。

市民病院の4階西病棟の○○○号室に入院している。

医師から説明を受けた時に、独り言を言うのが心配だと言ったら、「そういう人もたくさんいますから」という返事だった。

○○○号室は大部屋だが、母の他に、似た状況と思われる男性がいて、盛んに看護師を呼んでいた。

看護師がなかなか来てくれないので、そのうち、「おにいちゃん、おにいちゃん」と私を呼び始めた。

 母はトイレに行きたがる。

尿は管で取ってもらっていて、便はおむつにしたものを看護師が取り換えるということらしいが、おむつに便をすることに慣れない母は、「トイレに紙がないの?」、「こんなところでするの?」と何度も心配そうに聞いてきた。

一気に悪化してしまう可能性も高いと見て、兄に電話して、「土日に一度会いに来ておいたら」と言ったら、日曜に行くとの返事だった。