「介護に実習生、日本語力どこまで 第1号の中国人2人、就労」という記事が、本日(2018年8月28日)の朝日新聞1面に出ました。
このタイトルは朝日デジタルのほうのタイトルで、新聞では「介護に実習生 日本語力どこまで」が大見出し、「第1号の中国人2人 就労」が小見出しになっています。
このブログの「第66回 認知症介護 NHK「金とく」「日中 支え合う“老後” ~進む介護協力~」を見た。」でも触れたように、日本の介護現場の人材不足はかなり深刻で、その解消のために日本政府は、昨年11月に外国人技能実習制度を変更し、介護分野でも実習生が受け入れられるようになりました。
その第1号が、簡雪梅さんと柴艶紅さんの2人の中国人ということです。
この2人が働き始めたのは宮崎県延岡市の介護施設「ひまわり」です。
この記事では、2人の就労を吉報として報じるというよりは、むしろ問題点を指摘しています。
それは2面の見出しにもはっきりとうかがえます。
2面の見出しには、「介護人材確保 日本前のめり」「実習生の日本語能力 条件緩く」とあります。
介護人材の送り手として日本政府が期待していたベトナムが消極的なことも背景にあるようです。
介護実習生にも日本語の力が求められ、一定の基準をクリアしないと、帰国させられてしまうという事情があるからです。
実習生の多くは日本に行くために多額の借金を抱える。
それなのに、日本語の力不足で帰国させられてしまっては、社会問題になる。
ベトナムには「労働・傷病兵・社会問題省」というのがあり、その大臣の「トラブルが多くなるので、介護分野で実習生を受け入れるのは勧めない」という言葉も紹介されています。
解説記事もあり、そこではドイツとの比較がなされています。
ドイツも相当の語学能力が必要で要件も厳しいらしいのですが、日本とでは待遇がまるで違うとのこと。
最低賃金が当たり前の日本と30万円の給料が期待できるドイツ。
このままでは良い人材が集まらないから、人材育成の仕組みを整える必要がある、と指摘しています。
そして、日本への介護の技能実習生の送り出しに積極的な中国。
中国が急速に高齢化しており、日本で学んだ介護技術を中国に持ち帰ってもらいたいという思惑もあるようです。
「同じ漢字圏で有利だから」という言葉も記事にありましたが、これはある意味誤解です。
たしかに同じ漢字を使うということで、コミュニケーションが成り立つこともあります。
しかし、現状では日本人と中国人の感覚的な相違はかなりのものと考えられます。
特に自己主張の強さという点で大きく異なります。
ただ、歴史的な経緯もあり、日本文化がかなり入り込んでいる台湾の人と日本人はなじみやすい、ということもありますし、「個性、個性」と言われて育ち、野球選手やサッカー選手が世界で活躍するのを見てきた若い世代の日本人は、上の世代の人たちより自己主張が強くなってきていたり、そのようなこともあるので、「日本人と中国人の感覚的な相違」といっても超えられないハードルではないかもしれません。
いろいろなことがうまく回っていくようになるには、ある程度の時間がかかることでしょう。
野茂選手の大リーグ挑戦で、日本の野球界が大きく変わりました。
制度の変更が進んだこともありますし、若い世代の感覚がそれまでと大きく変わりました。
野球と介護とでは全く異なりますが、簡雪梅さんと柴艶紅さんが、日本と中国の介護の未来の扉を開く、野茂選手のような存在になってくれることを願ってやみません。
元の記事を確認されたい方は、コチラ→「介護に実習生、日本語力どこまで 第1号の中国人2人、就労」