第58回 認知症介護 夜中の激しい独り言

 「母親は男を作って家を出て行ってしまった。だからお母さんは、母親代わりとして妹たちの面倒をみることになった。」

 母からこう聞かされたのは、もちろん私が成人してからでした。

 戦争の影響もあり、母はつらい子ども時代を過ごしてきたようでした。

 認知症と診断されて4年程が経ち、母の独り言もだんだん激しくなってきました。

 断片的な記憶が混線しているような感じでした。

 現在のことも、自分が子どもだった頃のことも。

 私にはやはり笑って過ごすことができません。

 どうしても独り言に見え隠れする母の思いを想像せずにはいられないのです。

 特に子供の頃のつらい記憶がよみがえっていることをうかがわせる独り言を聞くと、私もつらくなってしまうのでした。

 2015年2月のメモです。

2015年2月○日

・昨日の昼間も今朝朝方の2時半頃も、おばあちゃんの独り言は結構激しかった。

 昨日は妻が書き取ったものがあるので、それをそのまま記しておく。

 「ばばあはいるか、男はいるか、」とずっと聞こえる。

 怒って答えている。

 「人をだまして ○○ちゃん(三女の名前)もいるよ。大きい車もあるよ、お父さんもいるよ。寝てないよ。10時半で時計が止まってるよ。こんなに明るいのに昼だろうか夜だろうか。もうすぐお昼だよ。お外で子どもが遊んでいるよ。○○ちゃん(三女の名前)もいるよ。お父さんもいるよ。大きい車もあるよ。黒い車もあるよ。今お嫁さんがね、夕飯済んだからもう寝てくださいって。もう寝てるよ。こんなに明るいのにね。みんな寝てるよ。もう昼だよ。男がほしいか。男がほしいか。ようやく静かになったか。おしろい付けて紅つけてどこ行くの。男がほしいか、男がほしいか。バカ。いちばん……(不明)だ、おばあちゃんは。」

 最後の方の「おしろい付けて紅つけて」の辺りは、子どものころの母親に対する気持ちが出てきているのだろうか。

 妻はあまり心配で、ケアマネージャーのNさんに電話したとのこと。

第57回 認知症介護 電気あんかはいいか

 母をグループホームに入れる決断をした大きな理由は二つでした。

 一つは、母が音を立てることが多くなり、家族の睡眠に影響するようになってきたこと。

 もう一つは、火事の心配が増えてきたことでした。

 そのあたりは、「第53回 認知症介護 ドンドン音をたてる」にも書きました。

 母は足が冷たいと訴え、しきりに湯たんぽを使いたがりました。

 母の部屋に行くとすごい湿気でした。

 ガスコンロでお湯を沸かすのです。

 母がやかんでお湯を沸かし、熱湯を湯たんぽにそそぐ。

 私が湯たんぽを触ってみると、まだ十分暖かいこともしばしばでした。

 20分か30分前にもお湯を沸かしているのです。

 火事の心配、母の火傷の心配が高いと感じました。

 そこでかかりつけのO医師に相談しました。

 O医師は、電気毛布や電気あんかを勧めてくれました。

 それで早速家電量販店に行き、電気毛布も電気あんかも買いました。

 火事になったり、火傷をしたりするよりは、安い物だと考えました。

 でも、結果からすると、電気毛布も電気あんかもそれほどよくはありませんでした。

 電気毛布について、私が心配していたのは四六時中つけっぱなしにすることでしたが、むしろ母はしょっちゅうスイッチを切っていました。

 電気毛布の暖かさが心地よくないのか、スイッチの消し忘れを気にして、しょっちゅう消していたのか分かりません。

 電気あんかも使い慣れたものではないので、母が自分から使うことはなかなかしませんでした。

 母がグループホームに入ったあと、どちらも処分しました。

 必要経費だったと思っています。

 2015年1月のメモです。

 母をグループホームに入れる決断をしかけている頃です。

2015年1月○日
・1週間ほど前におばあちゃんをOクリニックに連れて行った。

 1か月に一度の定期健診だ。

 幻聴が聞こえているかのような独り言が多くなってきたこと、不機嫌になることが多くなってきたこと、おかずにやたらしょうゆをかけたがること、一度お風呂で大便をしたこと等をメモ用紙に書いて伝えてきた。

 中でも湯たんぽのお湯や、髪をなでつけるお湯を頻繁に沸かすので、火事と火傷の心配があることも伝えた。

 電気毛布や電気あんかがいいと勧められたので、早速翌日に買いに行った。

 しかし、適切にスイッチを付けたり消したりが出来ないので、心配は尽きない。

 ずっとつけっぱなしを心配していたが、結構消している。

 あんかは自分からは使わない。

 新しいものだから使い方がよく分からないのだろう。

 説明しても分からない。

 それで、結局はお湯を沸かしているので、火の心配は変わらない。

 電気毛布を使い始めて、多少湯を沸かす回数が減ったかなという程度だ。

 ティファールを使ってくれれば危なくなくていいのだが、使えない。

 家が燃えてしまうリスクを考えると、もう施設に預けてしまうのがいいような気もしてくる。

 母は悲しむだろうから、なかなかその決断はできない。